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名古屋高等裁判所 昭和47年(ネ)21号 判決 1974年4月30日

控訴人(附帯被控訴人)

日比野信夫

右訴訟代理人

竹下伝吉

外二名

被控訴人(附帯控訴人)

森晟

右訴訟代理人

入谷規一

外四名

主文

一、附帯被控訴人は附帯控訴人に対し、別紙第四目録記載の建物のうち別紙図面中イ、ロ、ハ、ニ、ホ、ヘ、イの各点を順次直線で結んだ線によつて囲まれた部分から退去して、別紙第二目録2記載の土地を明渡せ。

二、附帯被控訴人は附帯控訴人に対し、金五〇八万〇、八〇〇円および昭和四七年一月一日から前項掲記の土地明渡ずみに至るまで一か月金五万一、〇〇〇円の割合による金員を支払え。

三、附帯被控訴人は、附帯控訴人から金一六六万六、五〇〇円の支払を受けるのと引換えに、附帯控訴人に対し、別紙第三目録1記載の土地につき昭和三一年三月三一日付売買を原因とする所有権移転登記手続をし、かつ第一項掲記の建物のその余の部分から退去して右目録2記載の土地を明渡せ。

四、附帯控訴人のその余の本位的請求を棄却する。

五、総訴訟費用はこれを一〇分しその七を附帯控訴人の負担とし、その余を附帯被控訴人の負担とする。

六、この判決は、附帯控訴人において金二五〇万円の担保を供するときは、附帯被控訴人に対し金員支払および土地明渡を命じた部分に限り、仮に執行することができる。

事実《省略》

理由

第一訴変更の適否について

一記載上次のことが明らかである。

1  原審において、附帯控訴人(第一審被告、反訴原告)は、附帯被控訴人(第一審原告、反訴被告)に対し、反訴請求(以下原請求という)として、(1)別紙第一、第二目録各1記載の土地が附帯控訴人の所有であることの確認、(2)本件建物についての所有権移転登記手続、(3)本件建物の明渡および不法占有による損害金の支払を求め、原判決はこれを全部認容し、附帯被控訴人の本訴請求を全部棄却したこと。

2  旧二審において、附帯控訴人は、原請求(2)、(3)につき訴を交換的に変更(以下第一次訴の変更という)して、(1)本件建物のうち仮換地五番の土地上にある部分の収去、同土地の明渡、(2)違約損害金一五〇万円の支払、(3)同第一目録2記載の土地(以下仮換地六番の土地という)上の建物(別紙図面表示乙、丙建物)の収去、同土地の明渡、(4)仮換地六番の土地の使用収益妨害による損害金の支払を求め、旧二審判決は上記(4)の損害金支払請求が一部二重になされていたとしてこの部分につき請求を棄却したほかは全部認容し、附帯被控訴人の控訴を棄却したこと、これに対し附帯被控訴人から上告がなされたが、旧二審判決中右(1)、(2)の請求に関する部分を除き上告を棄却され、右(1)、(2)の各請求のみが新二審に係属するところとなつたこと。

3  新二審において、附帯控訴人は、再び訴を交換的に変更(以下第二次訴の変更という)して、(1)本件建物についての所有権移転登記手続(原請求(2))、(2)本件建物の明渡、損害金の支払(原請求(3))、(3)仮換地五番の土地のうち本件建物が存在する部分以外の部分の明渡、(4)売買代金一六六万六、五〇〇円の支払と引換えにする同第三目録1記載の土地についての所有権移転登記手続および仮換地四番の一の土地のうち本件建物が存在する部分以外の部分の明渡を求め、これに対し附帯被控訴人は不同意の申述をしたこと、さらに、附帯控訴人は、第二次訴の変更による右(3)、(4)の各土地明渡請求につき明渡を求める範囲をそれぞれ仮換地五番および仮換地四番の一の各土地全部に拡張した後、重ねて訴を変更(以下第三次訴の変更という)して、右(1)ないし(3)の各請求に代え、第一次訴の変更による請求(1)、(2)を主位的請求となし、予備的請求として、第二次訴の変更(4)の請求(土地明渡請求については拡張されたもの)のほか、仮換地五番の土地の退去明渡および同土地の不法占有による損害金の支払請求を追加したこと。

二右の経過によれば附帯控訴人のなした第三次訴の変更申立は、第一次訴の変更による請求(1)、(2)につきなされた第二次訴の変更申立を撤回するものにほかならないというべきところ、第二次訴の変更申立のなかには右(1)、(2)の各請求につき訴を取下げる趣旨が含まれていると解されるが、そのように旧訴の取下を伴う訴の交換的変更が申立てられたのに対し、相手方が異議を述べてこれに同意しない場合は、右訴の取下がその効果を生じたものとされない間に、右申立を撤回することは、相手方の異議に応じたこととなり、また、なんら訴訟手続を錯綜または遅滞させることとはならないから、適法になしうるものと解するのが相当である。したがつて、附帯被控訴人が異議を述べ、これに同意しなかつた第二次訴の変更申立は、第一次訴の変更による請求(1)、(2)につき適法に撤回されたもの、すなわち第三次訴の変更は本位的請求については適法といわなければならないから、これについての附帯控訴人の異議は理由がなく採用できない。

三しかるところ附帯被控訴人は、第二次訴の変更による請求(4)(第三次訴の変更による予備的請求第二項)および第三次訴の更更による追加的請求(予備的請求第一項)につきいずれも新たな反訴の提起であるとしてその提起には附帯被控訴人の同意が必要である旨主張する。しかし、右各請求はいずれも訴の変更により追加されたものであつて、相手方の本訴に対する反訴として提起された訴にかかる請求でない(本訴の全部につき既に確定した終局判決があつても異らないものと解する)から、附帯被控訴人の右主張は採用の限りでない。また、反訴の変更も訴の変更にほかならないから、附帯被控訴人主張のような事情にあるからといつて、予備的請求第二項の追加をもつて新たな反訴の提起と同視して、附帯被控訴人の同意がなければこれをなし得ないとする根拠はない。

四さらに、附帯被控訴人は予備的請求第二項と本位的請求第二項とは請求の基礎を異にするから、予備的請求第二項の追加は訴の変更としても許されない旨主張する。しかしながら、予備的請求第二項は第二契約の履行を求めるものであり、一方、本位的請求第二項は該第二契約不履行による損害賠償を求めるものであるから、請求の基本的事実は共通しているから、請求の基礎を同一にすると解すべきである。したがつて、附帯被控訴人の右主張も採用できない。《以下省略》

(綿引末男 山内茂克 豊島利夫)

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